赤ちゃんはストローク(ふれあいの意味、交流分析の用語)欲求のオバケだ。最近、快体験のバージョンがおっぱいの他に一つ増えて、「抱っこ」が加わった。四六時中抱っこしろと欲求する。
これはストローク欲求の他に、探索行動の始まりでもある。まだ自分で移動できず、自由に姿勢も変えられないので、探索欲求を満たすには、誰かに抱かれて移動しなくてはならない。それもよく世界が見えるように「立て抱っこ」しながら歩け、と命令される。キョロキョロとあちこちを興味深そうに見ている。それに付き合うレイちゃんは大変だけど、非常に重要な知的発達過程だ。
まだ自分の思うように四肢の運動をコントロールできないので、おもちゃで上手く遊べない。ベビージムに興味を示して、バタバタやっているとおもちゃに触れるのだが、意志を持ってではなく、偶然に手足が当たった感じなので、まだ面白さが長持ちしない。
それから、顔の表情の豊かさは、どうやら既にこの時期に概ね決まるようだ。顔を覗き込む大人の表情を、何となく真似ている。この頃に大人の豊かな表情を見て育つと、とても表情豊かな子どもに育つ。それは大人から見て「可愛い」と思われて構ってもらいやすくなり、その後に至って対人関係の濃厚さに影響を与える。親など周りの大人が無表情だと、赤ちゃんの表情も乏しくなりがちで、長じてもあっさりした人間関係になりやすい。そんな感情表現の仕方や性格も、こんな赤ちゃんの頃に決まるらしい。驚くべきことだ。
よく泣く子は、勢いストロークを多く受け取れる。幼い頃には親は育てにくいが、その分生きるために必要とする関わり、基本的信頼関係を構築しやすくなる。大人になって精神的な問題を生じやすいのは、例外もあるが、赤ちゃんの頃にあまり泣かない、手のかからない子で、放っておかれたケースに多い傾向がある。
発達障がいの子どもさんを見ていると、赤ちゃんの頃にひどく泣いて手のつけられなかったタイプと、泣かないし大人の刺激にほとんど反応しないタイプに、極端に分かれる。過敏なタイプは聞き分けのなさや親のストレスから虐待に繋がる不幸なケースもあるので一概には言えないが、親御さんが苦労しながらしっかり付き合ってあげた場合には、早期に発達の偏りに気づきやすくなり、適切な療育に繋げたり、信頼関係を曲がりなりにも構築でき、基本的には人の好きな子どもに育つ。あまり反応しなかった大人しい子の方が、成長した後に人間関係を作りにくい傾向がある。
人間は社会性の動物として進化した。ふれあいは本能の欲求だ。子どもの構って欲しいという欲求に十分に応えてあげることが、何よりの知的・精神的発達に寄与する。早期教育の基本はそれに尽きる。また大人になっても、私たちの生きるエネルギーの源は、他者とのストローク交換に他ならない。より良い人生は、より良い人間関係が創る。
美沙落合
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